ここまでは構えた時の下半身の置き方について述べてきました。股を割って、アウトラインに体重をかけ、意識は脚の内側において、骨盤は自然に前傾しているというのが、要旨です。一見複雑なようですが、これらは股を割る事によって付随する動作であり、感覚ですので、股を割る感覚が身に付けば、自然な事です。
では上半身の置き方を見て行きます。まず下の図を見て下さい。これは僧帽筋(オレンジ)広背筋(赤)肩甲骨(緑)を表したものです。
この構造はあたかも背中に中華鍋とか、亀の甲羅を背負っているようなものです。ですから、これらユニットをどのようなポジションに置くかによって、体の受ける負担が変わって来ます。
結論としては、下図のように、肋骨ブロックの上に、僧帽筋、広背筋、肩甲骨、つまり「背中」を乗せてしまえば良いのです。これが最も負担のかからない構え方です。結果的に上体はやや前傾し、背中の凸アーチは高い位置に来ます。この上体の前傾は骨盤の前傾(股関節の屈曲)による結果です
これは例えば、背中に人をおんぶする時、前傾姿勢を取るのと同じ理屈です。
それでは背中を肋骨ブロックに乗せないで、真っすぐにして構えた場合はどうなるでしょうか。下の図を見て下さい。(a)と(b)ではどちらがバットを持つのに疲れるでしょうか。
(a)
(b)
(a)の場合は肩甲骨をこの構えの高さに保持するために、背中の筋肉の収縮を必要とします。一方で、(b)の場合は肩甲骨が肋骨ブロックの上に「構造的に」乗っかっているわけですから、そこからケーブルワイヤーで吊り下げるように、バットを保持すれば良いので、筋肉に負担がかからず、無駄な力を使わずに構える事が出来るのです。
つまり、背中を肋骨ブロックの上に乗せる(かぶせる)事が出来れば、腕は骨折した時に使う三角巾が腕を吊り下げる(下図)ようにバットを保持する事が出来るので、必要最低限の力でバットを持つ事が出来るわけです。(この三角巾の場合は腕をバットに見たてる)
骨格の構造を利用すると、必要最低限の力でバットを構える事が出来るというわけです。
ですから、下図のように背中に定規でも入れているかのように真っすぐにした構えでは腕と背中の筋肉が緊張するので、柔軟なスイングをする事が難しくなります。
構えでは下の写真のように、股関節の屈曲角度に応じて、上体を前傾させ、肋骨ブロックに背中を乗せる(かぶせる)ようにするのが良いと言う事です。