では構えで上体が前傾している事の意味はどこにあるのでしょうか。まずは下の写真を見てください。
これらの写真では一見して重心が体の真中にあるように見えます。ところが良く考えてみると、グリップもバットも捕手寄りにあるのだから、実際にはバランスが後に傾いている事になるのです。その結果、スイングも自然と後重心になります。必ずしもここで挙げた打者にその傾向が顕著であるというわけではありませんが、一般的に後重心である事の最大の問題点は俗に言うアッパースイングです。下から見上げるようなアングルでボールを見る形になる事、必然的にバットが下から出る事が問題であると言うわけです。もちろん、フォロースルーではバットが高く振り抜かれ、アッパーカットの軌道を描くのが良いのですが、ボールを見るアングルというのはアゴを引いて上から見る事が好ましいはずです。では下の写真を見てください。
バリー・ボンズもホルヘ・カントゥと同じように、やや上体の前傾したバランスを取りながらも、フォローでは奇麗に体軸が後傾している事に驚かされます。
そしてケン・グリフィーJrも同じです。さらにアレックス・ラミレスもそうです。
ところで、上体を前傾させた構えには思わぬメリットが有ります。それは「視界」の問題に関してです。前の肩が下がると、自然にアゴの下に肩が治まるので、視界から前肩が消えます。これによって低めとインコースに視界が開けるわけです。特にインコースの高めは肩のラインを平行にすると、前の肩だけでは無く、前の肘も邪魔になり、視界を防ぐだけでは無く、バットを出す事に対しても障壁となりますので、構えで前の肩を下げて、アゴの下に治める事のメリットは大きいでしょう。下の写真はその事を表現しています。前の肩を下げる事によって、緑の部分だけ視界が開けるという意味です。そしてもちろん、前の肩が下がるので必然的に後ろの肘が挙りやすくなって、トップハンドの力が使いやすい事もメリットです。
そして、前の肩をアゴの下に治める(アゴを肩に乗せる必要は無い)コツは下の写真のように、斜め45度の角度で、内側に引き込むようにする事です。この時、トップハンドの肘までつられて背中側に入らないようにして下さい。
この構えなら、インコース高めにも余裕が出来る上に、アウトコース低めにも手が届く上体の角度を作りやすいですね。アウトコースの低めに手が届きやすいと、ベースから離れて立てるので、さらにインコースに余裕が出来ると言う好循環(こんな日本語あったっけ)が期待出来るわけです。